G-5のレビュー フェンダーとローランドの技術が融合した異色のギター
ある時、オーディオインターフェースUA-55の調べ物のため、ローランドのwebサイトを眺めていました。
そこで新商品のギターが紹介されていました。
へぇ、なんだろ…と商品説明を見ると、
ストラトキャスターにテレキャスやハムバッカーを融合
なにを言ってるんだ、ロボットか!と思い、即日注文しました。
それが、フェンダーの伝統とローランドの革新技術が融合したモデリングギター「G-5 VG Stratocaster」です。
見た目は王道のストラトキャスター。
しかしその心臓部には、多彩なギターサウンドやチューニングを瞬時に切り替えるローランドのCOSMテクノロジーが搭載されています。
GOOD- 基本はフェンダーの王道ストラト:弾き心地や「素の音」は紛れもなくフェンダー。
- ギター1本で多彩なサウンドメイク:ストラト、テレキャス、ハムバッカー、アコギのサウンドをノブ一つで切り替え。
- 変則チューニングが一瞬:ドロップDはもちろん、オープンGやDADGADなど、物理的にペグを回さずチューニングを変更。
- ステージ映えするLED:暗いステージで青く光るインジケーターが、さりげなく個性を主張します。
- モデリング機能には電池が必須:単3電池4本が必要。電池がなくても通常のストラトとしては使えます。
- フェンダーメキシコ製ならではの個性: USA製とは異なる仕様。好みが分かれるかもしれません。
目次
基盤となる「王道のストラトキャスター」としての実力
ギタリストでなくても知名度抜群の二大メーカー、フェンダーとギブソン。
そのフェンダーのストラトキャスターという伝統的なモデルです。
まずそのシェイプ。
あらゆる場面で演奏に耐えるボディで頑丈です。
ステージで動き回っても部品が緩むことはありません。
そして3つのシングルコイルピックアップ。
フロントは甘く、センターは伸びが良く、リアは程よくキレがある音。
アンプを通した音は素直で、エフェクターを挟んでも雑味なく反映されます。
ひとつの音作りの指標となるでしょう。
そしてこのギターをどう使いこなすか、弾き手の腕が問われる1本です。
G-5の心臓部 ギター1本で4つの顔を持つ「モデリング機能」
特徴は何と言ってもモデリング技術。
- ストラト
- テレキャス
- ハム
- アコースティック
これら4つのモデルをシミュレートし、ノブひとつで切り替えることができます。
エフェクターでシミュレートするものはたくさんありますが、それをギター本体に搭載しているものは類を見ません。
その秘密はGKピックアップ(ディバイデッド・ピックアップ)にあります。
ブリッジとリアピックアップの間に差し込まれた謎のデバイス。
これが信号を取り込み、内部で変換して出力するモデリング技術を搭載しています。
例えば私のケースだと、
- イントロはテレキャスのジャキっとしたカッティング
- サビでストラトのハーフトーン
- ギターソロではハムバッカーの太いリードサウンド
のような構成を曲中で切り替えたいと思うことがあります。
そんな時にこのギターがあれば、それぞれ別のギターを用意する必要がなく、ライブやレコーディングも1本で完結できます。
私のようなものぐさにはもってこいです。
モデリングの中ではテレキャスモードにして、センターで鳴る音がお気に入り。
本来テレキャスには存在しないポジションですが、これが何とも言えない、きらびやかでエレガントな響きを生み出します。
私のYouTubeチャンネルで最も再生回数の多い演奏動画がまさしくこの音色を使っているので、思い入れが強いです。
下の画面のサウンドがG-5のテレキャスモードです。
この音、普通のストラトやテレキャスでは絶対に出せません。
マンネリを破壊する「変則チューニング機能」
G-5が他のギターと一線を画す、もう一つの強力な機能が変則チューニング機能です。
本機はペグを触らず、ノブを回すだけで再現できます。
- ドロップD(DADGBE)
- オープンG(DGDGBD)
- Dモーダル(DADGAD)
- バリトン(BEADF#B)
- 12弦のシミュレート
これらをノブひとつで切り替えることができます。
(ドロップDにする機能は他のギターにも見られますが)
これを可能としているものが、さきほど紹介したGKピックアップにあります。
通常のピックアップとは違い、各弦の信号を独立して出力することができるため、変則チューニングに対応できる仕組みです。
特にステージ上ではチューニングの変更に焦ることがあります。
そんな時にこの機能を使えば、ピッチのズレを根本的に防ぐことができます。
チューニングの違ったギターを複数用意する必要のない利点があります。
私はDモーダル(DADGAD)のsus4トーンがお気に入り。
sus4が絡む独特の浮遊感は、アンビエントな曲やケルティックなフレーズ作りに最適です。
12弦モードはシャリシャリして、ちょっと期待外れかもしれません。
宅録では使い所が難しいですが、音色はリッチになるので飛び道具的な目的だと良いかも。
青く光るLEDがかっこいい
インジケーターとして、青色のLEDが埋め込まれています。
これが暗闇で光るとアクセントになりかっこいいです。
また、電池残量も示してくれます。
残量が残り少ないと、ゆっくり点滅して交換を促すよう知らせてくれます。
消灯すると電池がありませんという表示灯です。
私の場合、わざと点滅状態にして、ステージで「なにあれ!?」と注目されることもあるので面白いですよ。
電池が必要
これらのモデリング技術を活用するために、単3電池4本が必要です。
充電可能なエネループなど用意すると経済的ですが、このギター最大の不安点かもしれません。
正直、私も本番前に「あれ、エネループ充電したっけ…?」と冷や汗をかいたことが一度や二度ではありません。
ただ、このギターの偉いところは、万が一電池が切れても、普通のストラトとしては問題なく音が出ること。
「最悪、モデリングは使えなくても演奏は可能」と思えるだけで、アクティブピックアップのEMGとは違って安心します。
ちなみに、ジャックにプラグを挿すと電源がONになるため、演奏しないときはプラグを外すと良いでしょう。
挿しっぱなしだと電池を消耗し続けます。
練習に夢中のあまりいつの間にか寝落ちし、翌朝電池が空になっていたことは内緒。
フェンダーメキシコ産
フェンダーメキシコ産と聞いて、正直最初は少し甘く見ていました。
実際に握ってみると、ネックが少し肉厚で、指板のエッジ処理がカッチリしている印象。
最初は少し違和感がありましたが、このガッシリとしたネックが生み出す「鳴り」が、このギターの個性だと気づきました。
USA製とはまた違う思想で作られた「もう一つのフェンダー」だと感じます。
作りや塗装の質は高く、コストパフォーマンスに優れたギターであることは間違いありません。
(TIPS)音が濁ると感じたら
音が濁るときはGKピックアップの高さが不適切な場合があります。
ドライバーで簡単に調節できるので、弦から1mm程度の距離を保つようにすると良いでしょう。
終わりに
フェンダー・ローランド「G-5 VG Stratocaster」の紹介でした。
ストラトキャスターにシングルコイルピックアップなので、ジャンルを問わずに活躍してくれるでしょう。
しかしその伝統的で定番な見た目とは裏腹に、ギター本体にエフェクターが搭載されたような変わり種でもあります。
残念ながら生産完了品のため新品での入手は困難ですが、中古市場では時々見かけることがあります。
もしあなたが、
- バンドで多彩な音色を求められ、機材の多さに悩むギタリスト
- 手癖のマンネリを打破するため、新しいサウンドやチューニングに触れたい
- 「ギター1本でどこまでやれるか」という、ちょっとした変わり者
であるなら、中古市場で探してみてください。
それが新しいギタースタイルに目覚めるきっかけになるかもしれません。
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