「愛と昇天のスタンダード・ナンバー編」J-POPやアニソンでテクニックを磨こう！第一弾との違いや難易度は？
好きなJ-POPやアニソンの曲で、楽しくギターテクニックが上達できたら。
そんな風に感じているギタリストは多いのではないでしょうか。
今回紹介する「天國のギター・トレーニング・ソング 愛と昇天のスタンダード・ナンバー編」は、まさにそんなあなたのための究極の教則本。
第一弾（前作）で挫折から救われたギタリストはもちろん、初心者から上級者まで、誰もが知っている名曲でギターヒーローへと続く一冊です。
この記事では、本書がなぜそれほど魅力的なのか、第一弾との違いや、実際に私が弾いて感じた各曲の攻略ポイントをレビューしていきます。
目次
基本情報
項目 内容 タイトル 天國のギター・トレーニング・ソング 愛と昇天のスタンダード・ナンバー編 著者名 小林 信一 出版社 リットーミュージック 発売日 2012/3/23 ページ数 80 価格 2,200円+税
第1弾と同じく、クラシック、洋楽、邦楽、アニメ、ゲーム、童謡など、さまざまなジャンルの世代を超えて愛されている名曲をギター・インストにアレンジしたエクササイズ曲集です。曲ごとに修得できるテクニックを設定しているので、曲を弾くことでギターの腕を磨くことができます。また、曲を通して演奏できるようになるためのエクササイズ・フレーズを各曲に収録。第1弾よりも、簡単な曲はより弾きやすく、難しい曲はより弾きごたえのある、幅広いレベル設定にしていますので、さまざまなタイプのギタリストに楽しんで頂ける1冊になっています。
収録曲
No. 曲名 1 エリーゼのために 2 威風堂々 3 主よ、人の望みの喜びよ 4 First Love 5 蕾 6 RYDEEN 7 ワインレッドの心 8 ラスト・クリスマス 9 宇宙のファンタジー 10 太陽にほえろ！のテーマ 11 ラブ・ストーリーは突然に 12 大きな古時計 13 朧月夜 14 ザナルカンドにて 15 少年時代 16 残酷な天使のテーゼ 17 ライオン 18 となりのトトロ
公式サイトより引用（音源の視聴もできます）
ここが違う！愛と昇天のスタンダード・ナンバー編
第一弾「天國のギター・トレーニング・ソング」の続編である第二弾、その名も「天國のギター・トレーニング・ソング 愛と昇天のスタンダード・ナンバー編」の紹介です。
コンセプトは第一弾と同様です。
- 中身すべてが課題曲
- 見開き2ページで完結
- 全ての指使いが指定あり
- 模範演奏とカラオケあり
本作では、何が違うのか見ていきましょう。
▲第一弾「天國のギター・トレーニング・ソング」の詳しい紹介はこちら。
1. より易しく、より難しく
前作が「挫折からの脱却」をテーマにしていたのに対し、本作は懐がさらに深くなりました。
例えば、収録曲の「少年時代」や「となりのトトロ」は、ギターを始めたばかりの初心者でもメロディを追いやすく、「1曲弾ききれた！」という成功体験を得るのに最適です。
その一方で、「RYDEEN」や「エリーゼのために」で登場するスイープは、上級者でも手応え十分。
「自分のテクニックはどこまで通用するのか」という腕試しにもなります。
自分の現在地に合った曲から始め、自然とステップアップしていける作りが最大の魅力です。
2. 選曲がJ-POP多め
収録曲の約半分がJ-POPのヒット曲です。
宇多田ヒカルさんの「First Love」、安全地帯さんの「ワインレッドの心」など、誰もが口ずさめる名曲ばかり。
メロディがすでに頭に入っているため、楽譜を追うのが非常に楽で、練習へのハードルがぐっと下がります。
「あのフレーズを自分の手で奏でたい」という純粋な憧れが、最高のモチベーションになるのです。
本書のメリット・デメリット
メリット
- 初心者から上級者まで挑戦しがいのあるアレンジ（特に初心者）
- 歌モノが多く耳馴染みがるので、メロディが頭に入りやすい
- 様々な奏法が網羅されており、弾ける弾けないの再確認ができる
デメリット
- 難しい曲はスイープ奏法があり、初心者お断りの側面がある
- 簡単すぎてコピーされない恐れがある
こんなひとにおすすめ
- これからエレキギターを始める人
- 得手不得手を確認し、さらに成長したい人
- 収録曲に知ってる曲が多い人
- レパートリーを増やしたい人
- ロックが好きな人
お気に入りの曲解説（音源あり）
私がライブ配信で演奏した曲です。
聴きながら解説を見てみてください。
※著者に許諾を得て演奏しています。楽曲利用申請済。
▲右下の再生ボタンから当時の配信を聴くことができます。
00:04～ 威風堂々
クラシックの名曲を、歪んだギターで弾く。
この背徳感と高揚感がたまりません。
同じテーマが繰り返されるので、暗譜はしやすいです。
後半はこのモチーフがオクターブ上で繰り返されるので、曲名通り「堂々とした」ロングトーンのビブラートが求められます。
ギター一本でオーケストラに立ち向かうような、壮大なスケール感を表現する練習に最適です。
02:07～ First Love
「甘いメロディをいかに魅力的に歌わせるか」
この一言に尽きます。
ただ楽譜通りに音をなぞるだけでは、この曲の持つ切なさは表現できません。
宇多田ヒカルさんの、あの吐息のような歌声をギターでどう表現するかが、私にとって最大の挑戦でした。
単なるテクニックとしてのスライドやビブラートではありません。
スライドの始まりの位置、ビブラートの揺れの深さと速さ、その全てで感情の機微を表現します。
私はAメロは浅く速めに、サビは深くゆったりと揺らすなど、セクションごとに表現を意識的に変えました。
技術的には、表現力豊かなビブラートを習得する最高のトレーニングになります。
この曲をマスターすれば、どんなバラードも「歌わせる」ことができるようになるでしょう。
06:06～ ラブ・ストーリーは突然に
イントロの重厚なリフから、歌メロの表情変化が特徴的。
楽譜の「余白」に何を描くか、ギタリストのセンスが問われます。
楽譜には書かれていない「間」や「タメ」をどこに入れるかで、演奏の印象がガラリと変わります。
私はオクターブ上の入りを少しだけ焦らすことで、原曲の切ない間を自分なりに表現してみました。
また、出番は少ないですがチョーキングビブラートは丁寧に。
小田和正さんのような高度な表現力に負けないよう、極限まで追い求めましょう。
09:40～ 大きな古時計
最初にこのアレンジを聴いた時は笑ってしまいました。
あの優しい童謡が、まさかのコテコテのヘヴィメタルに！
しかし、弾いてみるとこれが最高にかっこよく、そして最高の練習曲だったのです。
全編にわたって、休むことなく正確なオルタネイトピッキングが求められます。
BPM自体は速くありませんが、これが右手の持久力と正確性を鍛える天国の（最高の）トレーニングになります。
正確無比なピッキングを身につければ、どんな速弾きフレーズにも応用が効きます。
シンプルなメロディだからこそ、ピッキングの強弱やブリッジミュートの掛け具合で、いくらでも表情をつけられます。
「昨日はクランチで、今日はハイゲインで」といったように、音作りを変えて遊ぶのもいいでしょう。
12:49～ 残酷な天使のテーゼ
アニソン史に残る名曲。
イントロの「キュイーン！」というピッキングハーモニクス。
これが一発で決まるかどうかで、聴き手の心を掴めるかが決まります。
最初は全然鳴ってくれず、心が折れかけました。
ピックを当てる位置、角度、親指を弦に触れさせるタイミング。
1mm単位でピッキングポイントを探る日々。
そして、ある日突然、完璧なハーモニクスが鳴った時のあの快感は、今でも忘れられません。
諦めずに探求してください。（配信では失敗しています）
ピッキングハーモニクスの精度向上はもちろん、Bメロのキレの良い単音カッティングは、リズム感を養う絶好の機会。
ミュートを「演奏」することで、タイトなサウンドに近づきます。
17:26～ ライオン
この曲はツインギターが織りなすイントロが最高にロックです。
一人で弾いてももちろん楽しいですが、この曲はぜひもう一歩踏み込んでみることをおすすめします。
と言うのも、譜面は主旋律しか記載されていませんが、ハモりパートを耳コピしてみるのはいかがでしょうか。
耳コピの練習にもなり、イントロの深みも増すでしょう。
まるで、すぐそばにシェリルとランカの二人が歌うのを待っているかのような。
細かい休符もあるので、音が残らないように歯切れよくミュートすることも忘れずに。
20:50～ となりのトトロ
夏の終わりの、あのノスタルジックな情景をギターで描く。
メロディは非常にシンプルですが、だからこそ一切のごまかしが効きません。
ギタリストとしての「基礎的な表現力」が丸裸にされる、恐ろしくも素晴らしい一曲です。
ロングトーンをただ伸ばすだけでは、退屈な演奏になってしまいます。
その一音の中に「雨上がりのバス停」や「森の匂い」をどう込めるか。
ビブラートの揺れの深さやスピードを絶えずコントロールし、聴き手の想像力を掻き立てるような音の余韻を残しましょう。
この曲をじっくり練習したおかげで、他のバラード曲を弾く際の一音一音の説得力が格段に増しました。
テクニックの先にある「芸術性」を教えてくれる、気づきのあるアレンジです。
おわりに
私がこの記事を通して伝えたかったのは、単に「うまいギタリストになるための教則本」ではない、ということです。
この本は、テクニックの先にある「ギターで音楽を追求する純粋な喜び」を、誰もが知っている名曲を通して教えてくれる、最高の案内役です。
私自身、この本と向き合う中で、苦手だったピッキングハーモニクスを克服できただけでなく、「このフレーズは、どんな想いで弾こうか？」と、一音一音に感情を込めることの大切さを改めて学びました。
それは、他の曲を弾くときにも活きる、かけがえのない武器になります。
ギターの練習は、時に孤独です。
来る日も来る日も基礎練習の繰り返しで、心が折れそうになる日もあるでしょう。
そんな時、この本を開いてみてください。そこには、あなたが青春時代に聴いたJ-POP、夢中になったアニソン、心を震わせたクラシックの名曲たちが、「さあ、私を弾いてくれ！」と待ち構えています。
基礎練習に疲れた時、弾けるレパートリーがなくて悩んだ時、この「天國のギター」は、あなたの「弾きたい」という初期衝動に再び火をつけてくれる、最高の良書になるはずです。
さあ、次はあなたの番です。
まずは一曲、一番好きな曲を。
丁寧な譜面と模範演奏を頼りに、思いっきり感情を込めて、ギターをかき鳴らしてください。
きっと、今まで知らなかったギターの新しい楽しさが見つかるでしょう。
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