Infinite Woodwindsは吹奏楽の期待の新星 軽さとリアルさを両立した異色の木管音源をレビュー
リアルな木管音源、探していませんか?
Infinite Woodwindsは、大容量サンプリングとは一線を画すアプローチで、驚くほどの「軽さ」と「リアルな表現力」を両立させた、繊細なサウンドが特徴です。
特に、一般的なオーケストラライブラリでは手薄になりがちな楽器までカバーしており、吹奏楽やポップスの編曲で大活躍します。
本記事では、Infinite Woodwindsを実際に使って感じた魅力と、導入前に知っておくべき注意点をレビューします。
GOOD- インストール容量が少なめで動作が軽い
- 29の木管楽器を収録
- 息遣いが伝わる優しい音色
- スマートレガートモードで滑らかな演奏
- 操作しやすいリバーブ、ポジション、マイク、コントロール
- Kontakt有料版が必要
- キースイッチがないため、独自の打ち込み方に慣れが必要
目次
驚きの軽さ!ノートPCでもサクサク動作
多くの音源がギガバイト単位でリリースするなか、Infinite Woodwindsのインストール容量はわずか12.3GB。
この驚異的なコンパクトさこそ、この音源の思想を最も象徴しています。
パッチの読み込みも一瞬で、メモリ消費もわずか30MBほどです。
この軽快さにより、制作中のアイデアをすぐに表現できます。
「音源の起動を待つ」というストレスから解放されることは、音楽制作において何よりのメリットです。
大容量=高音質とは限りませんし、コンパクトにまとまった完成度の高いプラグインだと思います。
吹奏楽もおまかせ!充実の29楽器
フルート、オーボエ、クラリネットといった基本的な木管楽器はもちろん、イングリッシュホルン、バスクラリネット、コントラファゴットまで網羅。
さらに特筆すべきは、ソプラノ、アルト、テナー、バリトンの4種類のサックスがすべて収録されている点です。
これにより、オーケストラだけでなく、ジャズや吹奏楽の編成にも対応できます。
木管楽器はリリースしているデベロッパーが少ないため、嬉しい仕様です。
息遣いが伝わる優しい音色
奏者のリードから息遣いが伝わる優しい音色を奏でてくれます。
ささやくような、透き通った音色です。
高音の繊細さ、低音の大胆さも兼ね揃えています。
全体的に大人しいので、ミックスすると音量が控えめ。
サックスはレンジが広いので、他楽器の音域をマスキング(上書き)しないように注意しましょう。
思想が光る「脱キースイッチ」と「スマートレガート」
Infinite Woodwindsの核心であり、最も異色と言えるのが、意図的にキースイッチを排除したことです。
その代わりに搭載されたのが、MIDIノートの音符の速さや長さで自動的に認識される「スマートレガート」システムです。
- 短いノートはスタッカートに
- 重なり合うノートは滑らかなレガートに
- コントロールチェンジ(CC)で息の量をコントロール
これは「奏法を記号で選ぶ」従来の打ち込みとは全く異なります。
「どのように演奏したいか」をMIDIノートで描くだけで、まるで生身の奏者のように解釈し、演奏してくれるのです。
この操作方法に慣れたとき、キースイッチの煩雑さから解放され、直感的で自由な表現力を手に入れることができるでしょう。
また、「レガートバイパス」モードが存在します。
これをONにすると「スマートレガート」機能なしで発音します。
滑らかな音の繋がりがなくなるので、ショートノートなどに向いています。
さらに、和音で鳴らすことができるため、スケッチ(曲の下書き)に適したモードです。
操作しやすいリバーブ、ポジション、マイク、コントロール
UI画面には操作しやすく各機能が配置されています。
3つのリバーブ
小規模(0.5秒)、中規模(0.9秒)、大規模(1.5秒)の空間系が存在します。
スタジオ向けのドライ、ホール向けのウェットなど残響を変えることができます。
単独で演奏するときはもちろん、他の楽器と混ぜる場合も、簡単に統一することができます。
0-127で変更するパラメータはないので注意。
座席の位置を指定できる
DAWのMIX画面でパンを設定することなく、プラグイン側で細かく配置を変更できます。
音源をロードすると基本の座席に位置します。
音が干渉する場合はずらしてみましょう。
3つのマイク
「クローズ」「メイン」「アンビエント」の音量をミックスまたは独立してコントロールできます。
プリセットも5つ用意されているので、統一性を確保できます。
把握しやすいコントロール
主要な奏法が画面に表示され、リアルタイムで変化の様子を捉えることができます。
| CC# | 内容 |
|---|---|
| CC#1 | ダイナミクス(抑揚) |
| CC#16 | フラッター(振動する音) |
| CC#17 | グロウル(歪んだ音) |
| CC#20 | ビブラート速度 |
| CC#21 | ビブラート深さ |
| CC#64 | レガートバイパス(スケッチモード) |
マウスで右クリックするとCC#も表示されるので、いつでも確認できます。
Kontakt有料版が必要
再生エンジンにはNative Instruments「Kontakt」を採用しています。
バージョン5.7以降のKontakt Fullが必要です。
無料のKontakt Playerでは動作しないため、所持していなければ追加費用を負担することになります。
他の主要な木管音源との比較
代表的な音源ライブラリである「Spitfire Audio」と「Vienna Symphonic Library」を例に、Infinite Woodwindsがどのような立ち位置にあるのかを比較します。
| 比較項目 | Infinite Woodwinds | SPITFIRE STUDIO WOODWINDS | Synchron Woodwinds |
|---|---|---|---|
| サウンド | ドライ・機敏 | 壮大・ウェット | ニュートラル・万能 |
| 得意ジャンル | 吹奏楽・ポップス | 映画音楽 | クラシック・オーケストラ |
| 動作の快適さ | 非常に軽い | やや重い | 普通 |
| 再生エンジン | Kontakt Full | Kontakt player | 独自Player |
どれが優れているかではなく、あなたの音楽にどれが一番合うか、として参考にしてください。
実践編「三日月の舞」を打ち込んでみた
この音源の真価を探るため、吹奏楽の名曲である「三日月の舞」をInfinite Woodwindsと姉妹音源のInfinite Brassを使って制作しました。
こだわったのは、木管楽器の繊細なニュアンスです。
キースイッチを使わずに、MIDIノートとベロシティの調整だけで、滑らかな演奏表現が可能になります。
ここにデベロッパーであるAaron Ventureの思想を読み取ることができるでしょう。
終わりに こんな人におすすめ
Aaron Venture「Infinite Woodwinds」は、ただの木管音源ではありません。
「軽さ」「音質」「音楽的な表現力」を融合させた、個性あるライブラリです。
こんな方には特におすすめです。
- 吹奏楽やポップスのアレンジをする方
- PCのスペックに不安があり、軽い音源を探している方
- キースイッチの切り替えが苦手で、もっと直感的に打ち込みたい方
- 繊細で美しい木管の音色を求めている方
管楽器の打ち込みは奥が深いですが、このInfinite Woodwindsは、その難しさを楽しさに変えてくれるでしょう。
管楽器は(リアルで)演奏が難しいので、貴重なライブラリでもあります。
「管楽器の打ち込みは難しい」——そう感じているあなたにこそ、この音源がもたらす「音楽を奏でる楽しさ」を、ぜひ体験してください。
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