Joshua Bell Violinのレビュー 5年前LASSから乗り換え今では最推しとなった理由
数あるソロヴァイオリン音源の中で、なぜEmbertoneの「Joshua Bell Violin」を5年以上も使い続け、最推しと断言するのか。
その理由は単純明快です。
この音源には、生演奏の「完璧ではない揺らぎ」が秘められているからです。
単に音がリアルなだけではありません。
グラミー賞受賞ヴァイオリニスト、ジョシュア・ベルの魂が宿ったかのような、息づかいまで聞こえるサウンド。
ベタ打ちでさえ感情を込めて演奏したかのようなフレーズを奏でてくれるのです。
この記事では、基本的な紹介はもちろん、5年以上使ってきたからこそ分かる「この音源のポテンシャルを引き出す方法」や、「よくある悩みとその解決策」まで、余すことなくお伝えします。
こんな人におすすめ- 楽曲に「本物のソロヴァイオリン」を取り入れたい
- ベタ打ちでもクオリティの高いデモを素早く作りたい
- 他のヴァイオリン音源で満足できなかった経験がある
- 生々しいアタック音、人が演奏したようなレガート、直感的な操作性を求めたい
Joshua Bell Violinは「歌うソロ」を求めるなら最高の選択肢です。
目次
5年前、私はヴァイオリン音源に悩んでいた
少し遠回りになりますが、私がなぜJoshua Bell Violinに辿り着いたのかをお話しさせてください。
5年前、私はDAWの画面の前で頭を抱えていました。
「もっと、こう…生々しくならないかな…」
当時使っていた業界標準とも言えるAudiobro「LA Scoring Strings 2.5」は、確かに美しかった。
しかし、ソロで鳴らすとその綺麗さが仇となったのです。
弓が弦をこする摩擦音や、息継ぎのような微かなノイズが足りない。
私が求めていたのは、コンサートホールの最前列で聴くような、奏者の体温まで感じるサウンドでした。
ソロヴァイオリンが曲の主役になるはずなのに、その主役が心から歌ってくれない。
そう悩んでいた頃に出会ったのが、Embertoneの「Joshua Bell Violin」でした。
元々はLASS等のアンサンブル音源ユーザーだったが、「歌うソロ」を追求しJoshua Bell Violinへ(デモ音源あり)
はじめに、音の比較を聴いてみてください。
LASS2.5
5年前に悩んでいたサウンド。綺麗ですが、どこか表情が硬いのが分かります。
Joshua Bell Violin
同じフレーズです。これだけでもう”歌い”始めているのがお分かりいただけるでしょうか。
好みの問題もあると思いますが、明確に違いますね。
当時、数人に意見してもらいましたが、後者が良いと判断された方が多数でした。
客観的な賛成も得られ、LASSからJoshua Bell Violinへ移行しました。
ストラディバリウスを鳴らせる
本物は生で聴いたことがありません。
しかし、ストラディバリウスは素晴らしいんだと、認めざるを得ない説得力があります。
その理由は、演奏者「ジョシュア・ベル」というヴァイオリニスト。
音源の名前になっているように、彼の芸術性と技巧を余すことなくサンプリングしています。
ここだけの話しですが、彼が所有しているストラディバリウスは「Gibson “ex Huberman”」と呼ばれる伝説的な一本です。
その昔、ヨハネス・ブラームスがこの楽器で演奏された曲を聴き、涙したとも言われています。
そんな名高い本機は過去に2度も盗難に遭い、数奇な運命を辿ってジョシュア・ベルの手に渡りました。
ストラディバリウスの響きを、指先でコントロールする快感
キャラクター設定として7つのトーン、8つのリバーブが用意されています。
さらにビブラートのバランスや、ピッチの深さといった8つのパラメータもあります。
ソロヴァイオリンに相応しいコントロールが可能となっています。
幅広いカスタマイズながら、操作しやすい音作りを実現しています。
例えば、トーンを「DELICATE」に設定し、ビブラートの深さ(Vibrato Depth)を少しだけ上げます。
たったこれだけで、切ないバラードにマッチする”泣き”のヴァイオリンが完成します。
これは、ジョシュア・ベル本人が持つストラディバリウスの響きを、自分の手で作り変えていくような感覚です。
弓が弦に触れる瞬間の、ゾクっとするほどのリアリティ
音の立ち上がりに注目してください。
他の音源が綺麗な音を鳴らすことに注力する一方で、この音源は弓が弦に「ギュッ」と食い込む、生々しいアタック音までサンプリングしています。
特に、少し強めのベロシティで打ち込んだ時の、魂が削られるような「ゾクッ」とする感覚。
初めて聴いた時は鳥肌が立ちました。
この「楽器の特性を含めたリアリティ」こそ、デジタルさを消し去る最大の要因です。
22のキースイッチ
11の奏法を網羅しています。
それもピアノ(p)からフォルテシモ(ff)まで細かくサンプリングしています。
さらに、22のキースイッチで表現の幅は底知れず。
色分けされているので、視覚的にも親切です。
個人的には「Rebow emo」の変化が好き。
AIでは到底真似できない、“エモさ”をキースイッチひとつで手軽に操作できます。
特にロングトーンから次の音に切り替わるタイミングで使うと効果的。
Audiostockの審査でもこの変化がウケるのか、好感触な手応えです。
ベタ打ちでも「人間的」になる、魔法のようなレガート
「ベタ打ちでもそれっぽくなる」というのは本当です。
その秘密は、12種類の異なるレコーディングによる音の繋がり(レガート)にあります。
前後の音や、弾く速さを自動で判断し、最適なレガートを提案してくれるのです。
これにより、MIDIキーボードで適当に弾いただけでも、まるでメロディが呼吸しているかのような自然な表情が生まれます。
同じノートでも発音が変わることがある
前後の音を参照してレガート感を決めているので、同じノートでも発音が変わることがあります。
フォルティシモ(ff)を指定しているのにフォルテ(f)っぽかったり。
ミックスダウンして聴いてみないと分からないこともあり、少々困ります。
それが人間味っぽく感じることもありますが。
この解決策としては、問題のノートのほんの少し手前に、ごく短い(ほとんど聴こえない)スタッカートのノートを入れてみてください。
これでレガートの繋がりがリセットされ、意図した通りの強いアタックで発音させることができます。
オートモードだとビブラートが不自然
オートモードだと、ビブラートをかけっぱなしになることがしばしばあります。
初心者がやりがちな手法でもあります。
しかし、プロの演奏家は、音の頭からビブラートをかけることは稀です。
まずはビブラート無しで音を伸ばし、徐々に深くしていく。
この「タメ」が生々しさを生むのです。
DAW上で再現するには、滑らかな山なりのカーブを描くことを意識してみてください。
これだけで、打ち込まれたヴァイオリンに命が宿ります。
あくまでソロ音源なのでミックスに注意
1stにこの音源、2ndに別のヴァイオリン音源を挿入するとミックス時にバランスが取れません。
まさに「ソロ音源」ならではの悩みです。
存在感が強すぎて、他の楽器と馴染まないことがあります。
こんな場合は、ミックス時にEQで800Hz〜1.2kHzあたりを少しだけ(-1.5dB程度)カットしてみてください。
ヴァイオリンの美味しい中域は残しつつ、オケの中で他の楽器の存在感を確保できます。
また、この音源のリバーブはOFFにして、オケ全体で使っているリバーブにセンドで送ると空気感が統一されます。
ソロ楽器としては高価
$199(約3.2万円)です。ソロ楽器としては高価な部類に入るかもしれません。
たまに25%OFFのセールがあるので、その時を狙うと良いでしょう。
終わりに この感動をぜひ体験してほしい
実際に弾いているかのような存在感に圧倒される、素晴らしいソロヴァイオリン音源です。
音の作りは非常にリアルで、ベタ打ちでも実際に演奏しているかのような仕上がり。
公式のデモを聴いて惚れたなら、期待を裏切りません。
難しいことをしなくても、お手軽にデモにあるような音が手に入ります。
ソロヴァイオリンなので用途はやや限定的ではありますが、5年以上使用を続ける最推しとなりました。
創造性を刺激し、楽曲のクオリティを強制的に一段階引き上げてくれることでしょう。
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