KORG「microKEY-25」「nanoKEY2」「nanoPAD2」「nanoKONTROL2」総合レビュー
機材選びはDTMの楽しさの入り口ですが、最初の壁でもあります。
大切なのは、高価な機材に気圧されず、まずは気軽に「遊び倒せる」こと。
実はそれが、良い曲を生む一番の近道だったりします。
今回は、KORGの定番4機種の中から、あなたにぴったりの機材を見つけるお手伝いをします。
目次
【王道の入門機】弾き心地とコンパクトさを両立「microKEY-25」
迷ったら、まずこれを手に取ってみてほしい。
そんな風に言える、まさに「王道」のMIDIキーボードです。
省スペースながら「弾く楽しさ」をしっかりと感じられるのが魅力です。
1. スペック
項目 詳細 鍵盤 ナチュラル・タッチ・ミニ・キーボード 鍵盤数 25 コントローラー ジョイスティック、アルペジエーター、サスティン / タップ、オクターブ・シフト オクターブ・シフト -4~+4 USB端子 B端子 電源 USBバス電源方式 外形寸法(W)×(D)×(H) 395 × 131 × 52 mm 質量 650g
2. メリット・デメリット
メリット-
絶妙な弾き心地のミニ鍵盤
しっかりとした重みと跳ね返りがあり、ベロシティ(弾く強さ)の表現がしやすいです。この「ちゃんとした感」が、音楽的なインスピレーションを刺激します。
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表現の幅を広げるジョイスティック
ギターのチョーキングのように、ピッチベンドとモジュレーションを指一本で直感的に操作可能。シンセリードを「にゅんにゅん」させる演奏がこれ一つで完結します。
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価格以上の価値があるバンドルソフト
これだけで元が取れてしまうほど豪華な音源やソフトが付属。買ったその日から本格的な曲作りを始められます。
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両手での演奏は困難
25鍵盤なので、両手で和音を弾くような本格的な演奏には向きません。あくまでメロディやコードの打ち込み用と割り切りましょう。
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価格の上昇
初代モデルと比較すると価格は上がりましたが、その分、機能やバンドルソフトが充実しており、コストパフォーマンスは依然として高いです。
3. 比較
| 比較項目 | microKEY-25 | SE25 | LPK25 MK2 | Keystation Mini 32 III |
|---|---|---|---|---|
| メーカー | KORG | NEKTAR | AKAI | M-AUDIO |
| 鍵盤数 | 25 | 25 | 25 | 32 |
| 特徴 | ジョイスティック | DAW連携 | 高性能Arp | 32鍵の広さ |
| 参考価格 | 1.2万円 | 6.5千円 | 6.5千円 | 6.5千円 |
競合製品の多いスペック帯。 ピッチベンドとモジュレーションを同時に操れるジョイスティックは、演奏の表現力において大きなアドバンテージになるでしょう。
4. おすすめする人
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DTMを始める最初の機材を探している初心者の方
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ギターやベースがメインで、補助的にメロディを打ち込みたい方
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省スペースでも、ある程度の「弾き心地」は妥協したくない方
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やっぱり最初は「ちゃんとした鍵盤」で始めたい、という堅実派のあなたへ。
【究極の薄型】ノートパソコンと持ち運ぶミニ鍵盤「nanoKEY2」
まるで板チョコのような圧倒的な薄さと軽さ。
鍵盤というより、文房具に近い存在かもしれません。
ノートパソコンと一緒にカバンに忍ばせて、カフェや移動中の「ちょっとした打ち込み」を可能にする機動力が魅力です。
1. スペック
項目 詳細 鍵盤 セパレート・タイプ・キーベッド 鍵盤数 25 コントローラー PITCH UP / DOWN、OCTAVE UP / DOWN、MOD、SUSTAIN オクターブ・シフト -4~+4 USB端子 mini B 電源 USBバス電源方式 外形寸法(W)×(D)×(H) 325 x 83 x 16 mm 質量 244g
2. メリット・デメリット
メリット-
圧倒的な携帯性
とにかく薄くて軽い。机の僅かなスペースにも置けて、ケースにスッと入れて持ち運べます。
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軽快な打鍵感
MacBookのキーボードのような、浅くてカタカタとした打鍵感が特徴。鍵盤というよりパソコンのキーボードを叩く感覚で、素早いフレーズ入力に向いています。
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カスタマイズ性
専用エディターソフト「KORG KONTROL Editor」で、ベロシティカーブ(弾く強さの反応)を4段階に調整可能。自分の好みのタッチ感に近づけることができます。
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独特なキータッチ
黒鍵と白鍵の段差がないフラットなデザインのため、ピアノ経験者は慣れが必要です。和音を押さえる際にミスタッチしやすいかもしれません。ただ、このフラットさを利用してグリッサンド(滑らせるような奏法)がやりやすい、という利点もあります。
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演奏の表現力
ボタン式のサスティンやモジュレーションなので、ペダルやホイールのような繊細な表現は苦手です。良くも悪くも、アイデアをメモするためのツールと割り切るのが吉です。
3. おすすめする人
- 外出先で作曲したいノマドワーカー的なDTMユーザー
- デスク周りを極限までミニマルにしたい方
- ピアノ経験がなく、パソコンキーボードの感覚で入力したい方
- アイデアが浮かぶ場所は、机の上とは限らない。そんなフットワークの軽いあなたへ。
【直感ビートメイク】指ドラムが楽しくなる「nanoPAD2」
頭で考えたリズムをマウスで打ち込むのではなく、指で叩いたグルーヴをそのまま形にする。
まさに音楽の「スケッチブック」。
アイデアを素早く形にできます。
1. スペック
項目 詳細 キー トリガー・パッド キー数 16 コントローラー X-Yパッド、HOLD、GATE ARP、TOUCH SCALE、KEY / RANGE、SCALE / TAP、SCENE USB端子 mini B 電源 USBバス電源方式 外形寸法(W)×(D)×(H) 325 x 83 x 16 mm 質量 285g
2. メリット・デメリット
メリット-
リズムが生まれるトリガーパッド
叩き心地の良い16個のパッドで、リアルタイムにビートを組むのが楽しくなります。打ち込みの時短にも繋がります。
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指先で音を操るX-Yパッド
KORGの代名詞「KAOSS PAD」のように、指一本で2つのパラメーター(例:フィルターとリバーブ)を同時に操作可能。トリッキーなサウンドエフェクトをライブ感覚で生み出せます。
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音楽理論不要のフレーズ生成機能
「TOUCH SCALE」や「GATE ARP」機能を使えば、パッドを適当になぞるだけで、スケールに沿ったメロディやアルペジオフレーズが簡単に生成できます。
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ドラム以外の可能性
パッドには好きな音を割り当てられるので、ボーカルサンプルを切って並べたり、効果音を鳴らすポン出し機として使ったりと、アイデア次第で用途は無限に広がります。
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本体が軽い
夢中になって強く叩くと、本体が軽いためズレてしまうことがあります。これはもう「あるある」なので、100円ショップの滑り止めシートを下に敷くのが定番の解決策です。
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パッドの感度
個体差や経年変化で、パッドの反応が少し鈍くなることがあります。
3. 比較
| 比較項目 | nanoPAD2 | LPD8 MK2 | STARRYPAD |
|---|---|---|---|
| メーカー | KORG | AKAI | Donner |
| パッド数 | 16 | 8 | 16 |
| コントローラー | X-Yパッド | ロータリー・ノブ x8 | フェーダー x2, ノブ x2 |
| 参考価格 | 8千円 | 6千円 | 7千円 |
4. おすすめする人
- ヒップホップやEDMなどのビートメイカー
- マウスでのドラム打ち込みにストレスを感じている方
- ライブパフォーマンスでサンプラーやエフェクトを多用する方
- 頭で考えるより、指で感じたグルーヴを信じたい、そんな感覚派のあなたへ。
【脱・マウス宣言】ミックス作業を効率化する「nanoKONTROL2」
DAWのミキサー画面を物理的に操作するためのコントローラー。
マウスで一つずつフェーダーを動かす退屈な作業を、直感的でクリエイティブな時間に変えてくれます。
1. スペック
項目 詳細 インターフェース ノブx8、スライダーx8、ボタンx24 コントローラー トランスポート・ボタン(REW / FF / STOP / PLAY / REC)、 CYCLE、MARKER、TRACK USB端子 mini B 電源 USBバス電源方式 外形寸法(W)×(D)×(H) 325 x 83 x 30 mm 質量 293g
2. メリット・デメリット
メリット-
ミキシングが快適に
複数のトラックの音量を両手で同時に調整する。この体験だけで、もうマウス操作には戻れなくなります。作業効率だけでなく、音楽のバランスを「体で」感じられるようになります。
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簡単セットアップ
Logic Pro, Cubase, Ableton Liveなど主要なDAWには専用の設定ファイルが用意されており、面倒なマッピング作業なしですぐに使えます。
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便利なシーン機能
4つまで設定を保存・切り替えできる「シーン機能」が秀逸。例えば「シーン1はミキサー操作用」「シーン2はシンセサイザーのパラメーター操作用」といった使い分けができ、一台で何役もこなせます。
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フェーダーのストロークが短い
コンパクトさとのトレードオフで、フェーダーの可動域が短めです。ミリ単位の超微細な音量調整は少し苦手かもしれません。大まかな操作を本機で、微調整をマウスで行うなど工夫しましょう。
3. 比較
| 比較項目 | nanoKONTROL2 | X-TOUCH MINI | MIDI MIX |
|---|---|---|---|
| メーカー | KORG | BEHRINGER | AKAI |
| スライダー数 | 8 | 1 | 9 (8+1) |
| ノブ数 | 8 | 8 (エンコーダー) | 24 (3x8) |
| 参考価格 | 1万円 | 1.2万円 | 1.3万円 |
4. おすすめする人
- マウスでのミックス作業に限界を感じている方
- オートメーションを直感的に書き込みたい方
- 省スペースなフィジカルコントローラーを探している方
- 曲作りの最終工程「ミックス」にも、楽器を演奏するような楽しさを見つけたいあなたへ。
まとめ あなたのDTMスタイルに合う一台は?
今回はKORGの定番コントローラー4機種をご紹介しました。
あなたの目的に合った一台をまとめてみましょう。
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メロディ入力がメインなら
microKEY-25弾き心地とコンパクトさを両立した王道の一台。
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持ち運びと省スペースを最優先するなら
nanoKEY2いつでもどこでも作曲したいあなたのためのモバイル・キーボード。
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直感的なビートメイクを楽しみたいなら
nanoPAD2指先からグルーヴを生み出す、リズム制作の要に。
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ミックス作業の効率を上げたいなら
nanoKONTROL2脱マウスで、より音楽的なミキシングを実現するコントローラー。
最高の機材とは、最も高価なものでも、最も多機能なものでもありません。
創作意欲を掻き立て、「曲が作りたくなる」と思わせてくれるシンプルなもの。
ぜひ、あなたにぴったりの一台を見つけて、作曲を楽しんでください。
▼midiとは
▼KORGのシンセサイザー比較