【脱・初心者】「ギターはリズムが9割」この真実に気づかないと、100年弾いても上手くならない
「Fの壁は越えた。好きなバンドのタブ譜も、なんとか最後まで追えるようになった。でも…なぜだろう。自分の演奏が、あのプロのCD音源やライブ映像みたいにカッコよく聴こえない」
そんな「見えない壁」に、今まさにぶつかっていませんか?
かつての私も、その壁の前で途方に暮れていました。
憧れのソロを完コピし、音が鳴ることに満足していたのです。
しかしバンドで合わせた時、ドラマーに言われた一言が私を打ちのめしました。
「お前のギター、ヨレヨレだわ」
衝撃でした。
音符は合っている。フレーズも間違っていない。
なのに、私のギターはバンドの演奏に馴染まず、ただ虚しく独り言を叫んでいるだけでした。
もしあなたが同じような悩みを抱えているなら、断言します。
その壁の正体は、「リズム」です。
これは、あなたのギタリスト人生を根底から変える、揺るぎない真実です。
この記事では、なぜリズムが9割と言い切れるのか、その理由と、あなたの演奏を激変させるための具体的なトレーニング方法を、どこよりも分かりやすくお伝えします。
目次
1. 最初に捨てるべき「3つの思い込み」
多くのギタリストは、リズムについて無意識のうちに勘違いをしています。
まず、この思い込みを捨てるところから始めましょう。
思い込み①リズム練習は、メトロノームに合わせるだけの地味な作業
合わせるのはスタートラインです。本当の目的は、メトロノームがなくても体が自然にリズムを刻むようになること。そして、ただ合わせるだけでなく、聴いていて心地よい「ノリ」を生み出すことです。
思い込み②速く弾ければリズム感も良いはず
全くの別物です。速弾きは、リズムの粗をごまかしてしまうことがあります。ゆっくりしたテンポのシンプルなフレーズを、どれだけ気持ちよく弾けるかで、本当のリズム感が試されます。
思い込み③リズムはドラムとベースが作るもの
バンドは全員でリズムを作るものです。特にギターの「ジャカジャカ」というコードストロークは、ドラムのハイハットと同じくらい、バンドのノリを決定づける重要なパートなのです。
2. なぜリズムが重要なのか?(比較音源あり)
ここでリズムがいかに重要か、比較音源を用意しました。
1つ目の演奏(NGテイク)と、2つ目の演奏(OKテイク)。
その違いは、聴き比べてみると明らか。
なぜリズムが重要か、答えはシンプルです。
リズムは音楽の「土台」だからです。
家を建てる時、「基礎工事」から取り掛かります。
この基礎がグラグラなら、どんなに立派な家を建てても、すぐに傾いてしまいますよね。
音楽も同じです。
リズムという基礎がしっかりして初めて、その上で弾くメロディやギターソロが輝くのです。
あなたの演奏がカッコよく聴こえないのは、フレーズが悪いのではなく、それを支える土台が揺れているからです。
聴いている人が安心して体を揺らせるか、自然と手拍子をしたくなるか。
その「心地よさ」の正体こそが、安定した良いリズムなのです。
3. カッティングの神様 ナイル・ロジャースのリズムは何故“踊れる”のか?
「リズムが重要だということは分かった。でも、本当に上手い人のリズムって、一体何が違うの?」
その疑問に答えるため、シック(Chic)のギタリスト、ナイル・ロジャースの演奏を、ほんの少しだけ解剖してみましょう。
題材は、シックの代表曲「おしゃれフリーク (Le Freak)」です。
自然と体が動き出しませんか?
この無条件に踊りたくなるカッティング・リフの秘密を、最初の1小節から解き明かしていきます。
譜面に隠された「音符」と「無音」の芸術
参考に簡易的なタブ譜です。
(1 e & a 2 e & a 3 e & a 4 e & a ) (1 e & a 2 e & a 3 e & a 4 e & a )E|---x--5--x--5-----5--x--x--x--5--x--5-----5--x--x--|---x--5--x--5-----5--x--x--x--5--x--5-----5--x--x--|B|---x--5--x--5-----5--x--x--x--5--x--5-----5--x--x--|---x--7--x--7-----7--x--x--x--7--x--7-----7--x--x--|G|---x--5--x--5-----5--x--x--x--5--x--5-----5--x--x--|---x--5--x--5-----5--x--x--x--5--x--5-----5--x--x--|D|---x--7--x--7-----7--x--x--x--7--x--7-----7--x--x--|---x--7--x--7-----7--x--x--x--7--x--7-----7--x--x--|A|---x--x--x--x-----x--x--x--x--x--x--x-----x--x--x--|---x--x--x--x-----x--x--x--x--x--x--x-----x--x--x--|E|---x--x--x--x-----x--x--x--x--x--x--x-----x--x--x--|---x--x--x--x-----x--x--x--x--x--x--x-----x--x--x--| ↓ ↑ ↓ ↑ ↓ ↑ ↓ ↑ ↓ ↑ ↓ ↑ ↓ ↑ ↓ ↑ ↓ ↑ ↓ ↑ ↓ ↑ ↓ ↑ ↓ ↑ ↓ ↑ ↓ ↑ ↓ ↑- x = ゴーストノート(ブラッシング音)
- ↓ = ダウンピッキング / ↑ = アップピッキング
- (1 e & a …) = 16分音符のカウント
このシンプルな譜面の中に、グルーヴの秘密が3つ隠されています。
秘密①ヒューマンメトロノーム!揺るぎない16ビート
まず注目すべきは、譜面の下に書いた矢印(↓↑)です。
ナイル・ロジャースの右手は、曲の間中、まるで精密機械のように常に一定の速さで16分音符を刻み続けています。
音を鳴らす時も、x(ゴーストノート)の時も、腕の振りは一切止まりません。
これが全ての土台になります。
「ヒューマンメトロノーム」を、神の領域で実現しているのがこの右手です。
揺るぎないビートがあるからこそ、聴き手は安心して体を委ねることができるのです。
秘密②「音を出すな」「音を置け」ゴーストノートの極意
次に、x(ゴーストノート)を見てください。
音符の数よりも、圧倒的にxの数が多いことに気づくはずです。
これがナイル・ロジャースの極意です。
彼は「音を鳴らすこと」と同じくらい、「音を鳴らさないこと(=ミュートしてパーカッシブな音を出すこと)」を重要視しています。
この「チャカ」というゴーストノートが、まるでドラムのハイハットのようにビートの隙間を埋め、リズムに絶妙な推進力を与えています。
ただコードを鳴らすだけでは生まれない、パーカッシブな快感がここから生まれるのです。
秘密③これぞ真骨頂!聴き手の予測を裏切る「“食う”リズム」
そして、これが最も重要なポイントです。
もう一度、譜面の1拍目を見てください。
( 1 e & a )---x--5--x--5-- ↓ ↑ ↓ ↑多くの人は、リズムのキリが良い「1拍目のアタマ(ダウンビート)」で「ジャーン!」と音を鳴らしたくなります。
しかし、ナイル・ロジャースはそれをしません。
1拍目のアタマ(1) → x(ゴーストノート)で外す。
16分音符2つ目のウラ拍(e) → ここで初めて5(コード音)を鳴らす。
聴き手が「ここだ!」と予測する一番強い拍をあえて無音で“食って”おき、その直後のウラ拍で音を出す。
この「予測の裏切り」こそが、聴き手の体に「おっ?」という心地よいフック(引っかかり)を生み、否応なく体を揺さぶるグルーヴの正体なのです。
揺るぎない16ビートの土台の上で、ゴーストノートを巧みに使い、最も効果的なタイミングでコードの音を“置いて”いる。
これが、彼のギターが世界を踊らせる秘密です。
4. 今日からできる リズム感・矯正トレーニング3選
「理屈はわかったけど、どうすればいいの?」
というあなたのために、今日からすぐに始められる、効果抜群のトレーニングを3つのレベルで紹介します。
Level 1:クリックを「消す」ゲーム
これは、あなたの耳の「ピント」を、リズムのズレに合わせるトレーニングです。
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メトロノームをBPM=60〜70くらいの、ゆっくりしたテンポに設定します。
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ギターの6弦(一番太い弦)の開放弦だけを使います。
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メトロノームの「カッ」という音と、自分のピッキングの「ドン」という音が、完全に同時に鳴るように意識して弾いてみましょう。
本当にピッタリ合った瞬間、クリック音がピッキング音に隠れて聴こえなくなります。
この感覚を大事にしましょう。
最初はダウンピッキングだけでOK。
少しでもズレると「カチッ」とクリック音がはみ出して聴こえるはず。
この「ズレ」が自分でわかるようになることが、上達の第一歩です。
Level 2:身体を「メトロノーム」にする
究極の目標は、自分の身体がメトロノームのように、正確なリズムを刻めるようになることです。
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足でリズムを取る
ギターを弾く時は、常に足で4分音符をトントンと踏みながら練習する癖をつけましょう。最初は意識しないと難しいですが、これが無意識にできるようになる頃には、演奏が驚くほど安定します。コードストロークを弾く時も、腕の振りだけでなく、この足の動きをガイドにしてみましょう。
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応用編
ギターを持っていない時、例えば通学・通勤中や歯磨き中にも、頭の中で好きな曲を流し、足でリズムを刻む癖をつけてみましょう。身体全体でリズムを感じることが、グルーヴへの入り口です。
Level 3:自分の演奏の「アラ探し」をしよう
これが最も効果があり、そして最も耳が痛い練習かもしれません。
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スマホの録音機能で、自分の演奏を録ってみましょう。
お題は「パワーコードで8分音符を8回刻むだけ」でOKです。
例:♪丨ズクズクズクズク丨ズクズクズクズク丨
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録音した音を、目を閉じて、他人の演奏だと思って聴いてみてください。
以下のポイントをチェックしてみましょう。
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テンポは一定?
最初より最後の方が速くなったり(走る)、遅くなったり(モタる)していませんか?
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音の粒は揃ってる?
8回のピッキングが、全部同じ音量・同じ強さで鳴っていますか? 一つだけ強く・弱くなったりしていませんか?
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聴いてて気持ちいい?
正直な感想として、これを聴いてノレますか?
自分の演奏の「アラ」と向き合うのは辛い作業ですが、これこそが上達への最短の近道です。
5. リズムを極めたその先へ 応用と自由の世界
ここまでの基礎トレーニングは、いわば音楽の「丈夫な足腰」を作る作業です。
そして、その強靭な足腰を手に入れた者だけが見ることのできる、さらに刺激的な世界があります。
応用編:リズムを「操る」〜変拍子とテンポ変更〜
普段私たちが聴いている多くの曲は4拍子ですが、世の中には5拍子や7拍子といった「変拍子」で構成されるスリリングな曲も存在します。
これらは、基礎的なリズム感がなければ、すぐに自分がどこを弾いているか分からなくなってしまう、まさに「応用問題」。
強固な土台があって初めて、その上で複雑な形の建物を建てられるのです。
また、プロの演奏家は、曲の感情を高めるために意図的にテンポを速くしたり(アッチェレランド)、逆にゆっくりにして壮大さを演出したり(リタルダンド)します。
これは、コントロールできずにテンポが揺れてしまうのとは全く違う、リズムを完全に支配しているからこそできる「プロの技」です。
発展編:リズムを「破る」〜芸術的逸脱〜
さらにその先には、リズムという「ルール」を極め尽くした天才が、あえてそのルールを“破る”ことで新しい表現を生み出す「芸術的逸脱」の世界が広がります。
例えば、ものすごく絵が上手な画家が、わざと形を崩して独特な肖像画を描くことがありますよね。
基礎のデッサン力が完璧だからこそ、その「崩し」がアートになるのです。
音楽も同じで、一見バラバラに聴こえるような即興演奏も、超一流のプレイヤーたちの間では、高度なリズム解釈に基づいた音楽的対話になっています。
もちろん、これは我々が目指す遥か彼方の話です。
基礎ができていないうちから真似をすれば、それは単に「下手な演奏」になってしまいます。
しかし、地道なリズム練習の先に、これほどまでに自由で創造的な世界が待っていると知ることは、あなたの練習のモチベーションを高めてくれるはずです。
6. おわりに 未来のギタリストのために
リズム練習は、正直に言って地味です。
ですが、これはギターにおける「筋トレ」と同じ。
続けた者だけが、誰にも真似できない「かっこいいノリ」という、一生モノの武器を手に入れることができます。
そしてその地道な一歩は、いつかあなたを「変拍子を乗りこなし、テンポを自在に操り、ルールさえも超えていく」
そんな自由な表現の世界へと連れて行ってくれる、最も重要な切り札でもあります。
次に楽器店でギターを試奏する機会があれば、試してみてください。
難しい速弾きを弾く必要はありません。
たった一つのコードを、あなたが今出せる最高のタイミングで、自信を持って鳴らしてみてください。
この記事を読んだあなたは、「ギターを弾く人」から、音楽の本質を理解した「ギタリスト」へと変化するのです。
参考文献 さらに学びたい人へ
この記事で述べられている概念は、多くの書籍やミュージシャンの言葉の中に共通しています。
より深く学びたい方は、ぜひ以下の文献を手に取ってみてください。
あなたの音楽人生をさらに豊かにしてくれるはずです。
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「ギターが下手」、原因の90%はリズム感 【新装版】(宮脇 俊郎 著)
ギター演奏のクオリティを左右する最大の要因は、テクニックや知識ではなく「リズム感」である。メトロノームを使った練習はもちろん、拍の感じ方、グルーヴの出し方など、多角的なアプローチでリズム感を養うことができます。
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ギター演奏の常識が覆る! 99%の人が弾けていない「本当のグルーヴ・カッティング」(竹内 一弘 著)
聴き手の心を揺さぶる「ノリ」や「間」を生み出すカッティングの極意に触れています。ナイル・ロジャースをはじめ、ギタリスト別スタイルを紹介しており、カッティングに役立つ豆知識も。
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意味がなければスイングはない(村上 春樹 著)
世界的作家であり、熱心な音楽愛好家でもある村上氏が、ジャズの名演を通して「スイング」や「グルーヴ」の本質について語るエッセイ集。感覚的な「ノリ」とは何かを、豊かな言葉で感じ取ることができます。
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雑誌やWebサイトにおける著名ギタリストのインタビュー記事
ナイル・ロジャース、パット・メセニー、ジョン・フルシアンテといった一流のギタリストたちは、リズムやタイム感の重要性について語っています。「(好きなギタリスト名) インタビュー」などで検索してみると面白いでしょう。
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