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20分

【脱・初心者】「ギターはリズムが9割」この真実に気づかないと、100年弾いても上手くならない

「Fの壁は越えた。好きなバンドのタブ譜も、なんとか最後まで追えるようになった。でも…なぜだろう。自分の演奏が、あのプロのCD音源やライブ映像みたいにカッコよく聴こえない」

そんな「見えない壁」に、今まさにぶつかっていませんか?

かつての私も、その壁の前で途方に暮れていました。

憧れのソロを完コピし、音が鳴ることに満足していたのです。

しかしバンドで合わせた時、ドラマーに言われた一言が私を打ちのめしました。

「お前のギター、ヨレヨレだわ」

衝撃でした。

音符は合っている。フレーズも間違っていない。

なのに、私のギターはバンドの演奏に馴染まず、ただ虚しく独り言を叫んでいるだけでした。

もしあなたが同じような悩みを抱えているなら、断言します。

その壁の正体は、「リズム」です。

これは、あなたのギタリスト人生を根底から変える、揺るぎない真実です。

この記事では、なぜリズムが9割と言い切れるのか、その理由と、あなたの演奏を激変させるための具体的なトレーニング方法を、どこよりも分かりやすくお伝えします。

目次#

1. 最初に捨てるべき「3つの思い込み」#

多くのギタリストは、リズムについて無意識のうちに勘違いをしています。

まず、この思い込みを捨てるところから始めましょう。

思い込み①リズム練習は、メトロノームに合わせるだけの地味な作業#

合わせるのはスタートラインです。本当の目的は、メトロノームがなくても体が自然にリズムを刻むようになること。そして、ただ合わせるだけでなく、聴いていて心地よい「ノリ」を生み出すことです。

思い込み②速く弾ければリズム感も良いはず#

全くの別物です。速弾きは、リズムの粗をごまかしてしまうことがあります。ゆっくりしたテンポのシンプルなフレーズを、どれだけ気持ちよく弾けるかで、本当のリズム感が試されます。

思い込み③リズムはドラムとベースが作るもの#

バンドは全員でリズムを作るものです。特にギターの「ジャカジャカ」というコードストロークは、ドラムのハイハットと同じくらい、バンドのノリを決定づける重要なパートなのです。

2. なぜリズムが重要なのか?(比較音源あり)#

ここでリズムがいかに重要か、比較音源を用意しました。

1つ目の演奏(NGテイク)と、2つ目の演奏(OKテイク)。

その違いは、聴き比べてみると明らか。

なぜリズムが重要か、答えはシンプルです。

リズムは音楽の「土台」だからです。

家を建てる時、「基礎工事」から取り掛かります。

この基礎がグラグラなら、どんなに立派な家を建てても、すぐに傾いてしまいますよね。

音楽も同じです。

リズムという基礎がしっかりして初めて、その上で弾くメロディやギターソロが輝くのです。

あなたの演奏がカッコよく聴こえないのは、フレーズが悪いのではなく、それを支える土台が揺れているからです。

聴いている人が安心して体を揺らせるか、自然と手拍子をしたくなるか。

その「心地よさ」の正体こそが、安定した良いリズムなのです。

3. カッティングの神様 ナイル・ロジャースのリズムは何故“踊れる”のか?#

「リズムが重要だということは分かった。でも、本当に上手い人のリズムって、一体何が違うの?」

その疑問に答えるため、シック(Chic)のギタリスト、ナイル・ロジャースの演奏を、ほんの少しだけ解剖してみましょう。

題材は、シックの代表曲「おしゃれフリーク (Le Freak)」です。

自然と体が動き出しませんか?

この無条件に踊りたくなるカッティング・リフの秘密を、最初の1小節から解き明かしていきます。

譜面に隠された「音符」と「無音」の芸術#

参考に簡易的なタブ譜です。

 (1 e & a 2 e & a 3 e & a 4 e & a )   (1 e & a 2 e & a 3 e & a 4 e & a )
E|---x--5--x--5-----5--x--x--x--5--x--5-----5--x--x--|---x--5--x--5-----5--x--x--x--5--x--5-----5--x--x--|
B|---x--5--x--5-----5--x--x--x--5--x--5-----5--x--x--|---x--7--x--7-----7--x--x--x--7--x--7-----7--x--x--|
G|---x--5--x--5-----5--x--x--x--5--x--5-----5--x--x--|---x--5--x--5-----5--x--x--x--5--x--5-----5--x--x--|
D|---x--7--x--7-----7--x--x--x--7--x--7-----7--x--x--|---x--7--x--7-----7--x--x--x--7--x--7-----7--x--x--|
A|---x--x--x--x-----x--x--x--x--x--x--x-----x--x--x--|---x--x--x--x-----x--x--x--x--x--x--x-----x--x--x--|
E|---x--x--x--x-----x--x--x--x--x--x--x-----x--x--x--|---x--x--x--x-----x--x--x--x--x--x--x-----x--x--x--|
   ↓ ↑ ↓ ↑ ↓ ↑ ↓ ↑ ↓ ↑ ↓ ↑ ↓ ↑ ↓ ↑    ↓ ↑ ↓ ↑ ↓ ↑ ↓ ↑ ↓ ↑ ↓ ↑ ↓ ↑ ↓ ↑
  • x = ゴーストノート(ブラッシング音)
  • ↓ = ダウンピッキング / ↑ = アップピッキング
  • (1 e & a …) = 16分音符のカウント

このシンプルな譜面の中に、グルーヴの秘密が3つ隠されています。

秘密①ヒューマンメトロノーム!揺るぎない16ビート#

まず注目すべきは、譜面の下に書いた矢印(↓↑)です。

ナイル・ロジャースの右手は、曲の間中、まるで精密機械のように常に一定の速さで16分音符を刻み続けています。

音を鳴らす時も、x(ゴーストノート)の時も、腕の振りは一切止まりません。

これが全ての土台になります。

「ヒューマンメトロノーム」を、神の領域で実現しているのがこの右手です。

揺るぎないビートがあるからこそ、聴き手は安心して体を委ねることができるのです。

秘密②「音を出すな」「音を置け」ゴーストノートの極意#

次に、x(ゴーストノート)を見てください。

音符の数よりも、圧倒的にxの数が多いことに気づくはずです。

これがナイル・ロジャースの極意です。

彼は「音を鳴らすこと」と同じくらい、「音を鳴らさないこと(=ミュートしてパーカッシブな音を出すこと)」を重要視しています。

この「チャカ」というゴーストノートが、まるでドラムのハイハットのようにビートの隙間を埋め、リズムに絶妙な推進力を与えています。

ただコードを鳴らすだけでは生まれない、パーカッシブな快感がここから生まれるのです。

秘密③これぞ真骨頂!聴き手の予測を裏切る「“食う”リズム」#

そして、これが最も重要なポイントです。

もう一度、譜面の1拍目を見てください。

( 1 e & a )
---x--5--x--5--
↓ ↑ ↓ ↑

多くの人は、リズムのキリが良い「1拍目のアタマ(ダウンビート)」で「ジャーン!」と音を鳴らしたくなります。

しかし、ナイル・ロジャースはそれをしません。

1拍目のアタマ(1) → x(ゴーストノート)で外す。

16分音符2つ目のウラ拍(e) → ここで初めて5(コード音)を鳴らす。

聴き手が「ここだ!」と予測する一番強い拍をあえて無音で“食って”おき、その直後のウラ拍で音を出す。

この「予測の裏切り」こそが、聴き手の体に「おっ?」という心地よいフック(引っかかり)を生み、否応なく体を揺さぶるグルーヴの正体なのです。

揺るぎない16ビートの土台の上で、ゴーストノートを巧みに使い、最も効果的なタイミングでコードの音を“置いて”いる。

これが、彼のギターが世界を踊らせる秘密です。

4. 今日からできる リズム感・矯正トレーニング3選#

「理屈はわかったけど、どうすればいいの?」

というあなたのために、今日からすぐに始められる、効果抜群のトレーニングを3つのレベルで紹介します。

Level 1:クリックを「消す」ゲーム#

これは、あなたの耳の「ピント」を、リズムのズレに合わせるトレーニングです。

  1. メトロノームをBPM=60〜70くらいの、ゆっくりしたテンポに設定します。

  2. ギターの6弦(一番太い弦)の開放弦だけを使います。

  3. メトロノームの「カッ」という音と、自分のピッキングの「ドン」という音が、完全に同時に鳴るように意識して弾いてみましょう。

本当にピッタリ合った瞬間、クリック音がピッキング音に隠れて聴こえなくなります。

この感覚を大事にしましょう。

最初はダウンピッキングだけでOK。

少しでもズレると「カチッ」とクリック音がはみ出して聴こえるはず。

この「ズレ」が自分でわかるようになることが、上達の第一歩です。

Level 2:身体を「メトロノーム」にする#

究極の目標は、自分の身体がメトロノームのように、正確なリズムを刻めるようになることです。

  1. 足でリズムを取る

    ギターを弾く時は、常に足で4分音符をトントンと踏みながら練習する癖をつけましょう。最初は意識しないと難しいですが、これが無意識にできるようになる頃には、演奏が驚くほど安定します。コードストロークを弾く時も、腕の振りだけでなく、この足の動きをガイドにしてみましょう。

  2. 応用編

    ギターを持っていない時、例えば通学・通勤中や歯磨き中にも、頭の中で好きな曲を流し、足でリズムを刻む癖をつけてみましょう。身体全体でリズムを感じることが、グルーヴへの入り口です。

Level 3:自分の演奏の「アラ探し」をしよう#

これが最も効果があり、そして最も耳が痛い練習かもしれません。

  1. スマホの録音機能で、自分の演奏を録ってみましょう。

    お題は「パワーコードで8分音符を8回刻むだけ」でOKです。

    例:♪丨ズクズクズクズク丨ズクズクズクズク丨

  2. 録音した音を、目を閉じて、他人の演奏だと思って聴いてみてください。

    以下のポイントをチェックしてみましょう。

  • テンポは一定?

    最初より最後の方が速くなったり(走る)、遅くなったり(モタる)していませんか?

  • 音の粒は揃ってる?

    8回のピッキングが、全部同じ音量・同じ強さで鳴っていますか? 一つだけ強く・弱くなったりしていませんか?

  • 聴いてて気持ちいい?

    正直な感想として、これを聴いてノレますか?

自分の演奏の「アラ」と向き合うのは辛い作業ですが、これこそが上達への最短の近道です。

5. リズムを極めたその先へ 応用と自由の世界#

ここまでの基礎トレーニングは、いわば音楽の「丈夫な足腰」を作る作業です。

そして、その強靭な足腰を手に入れた者だけが見ることのできる、さらに刺激的な世界があります。

応用編:リズムを「操る」〜変拍子とテンポ変更〜#

普段私たちが聴いている多くの曲は4拍子ですが、世の中には5拍子や7拍子といった「変拍子」で構成されるスリリングな曲も存在します。

これらは、基礎的なリズム感がなければ、すぐに自分がどこを弾いているか分からなくなってしまう、まさに「応用問題」。

強固な土台があって初めて、その上で複雑な形の建物を建てられるのです。

また、プロの演奏家は、曲の感情を高めるために意図的にテンポを速くしたり(アッチェレランド)、逆にゆっくりにして壮大さを演出したり(リタルダンド)します。

これは、コントロールできずにテンポが揺れてしまうのとは全く違う、リズムを完全に支配しているからこそできる「プロの技」です。

発展編:リズムを「破る」〜芸術的逸脱〜#

さらにその先には、リズムという「ルール」を極め尽くした天才が、あえてそのルールを“破る”ことで新しい表現を生み出す「芸術的逸脱」の世界が広がります。

例えば、ものすごく絵が上手な画家が、わざと形を崩して独特な肖像画を描くことがありますよね。

基礎のデッサン力が完璧だからこそ、その「崩し」がアートになるのです。

音楽も同じで、一見バラバラに聴こえるような即興演奏も、超一流のプレイヤーたちの間では、高度なリズム解釈に基づいた音楽的対話になっています。

もちろん、これは我々が目指す遥か彼方の話です。

基礎ができていないうちから真似をすれば、それは単に「下手な演奏」になってしまいます。

しかし、地道なリズム練習の先に、これほどまでに自由で創造的な世界が待っていると知ることは、あなたの練習のモチベーションを高めてくれるはずです。

6. おわりに 未来のギタリストのために#

リズム練習は、正直に言って地味です。

ですが、これはギターにおける「筋トレ」と同じ。

続けた者だけが、誰にも真似できない「かっこいいノリ」という、一生モノの武器を手に入れることができます。

そしてその地道な一歩は、いつかあなたを「変拍子を乗りこなし、テンポを自在に操り、ルールさえも超えていく」

そんな自由な表現の世界へと連れて行ってくれる、最も重要な切り札でもあります。

次に楽器店でギターを試奏する機会があれば、試してみてください。

難しい速弾きを弾く必要はありません。

たった一つのコードを、あなたが今出せる最高のタイミングで、自信を持って鳴らしてみてください。

この記事を読んだあなたは、「ギターを弾く人」から、音楽の本質を理解した「ギタリスト」へと変化するのです。

参考文献 さらに学びたい人へ#

この記事で述べられている概念は、多くの書籍やミュージシャンの言葉の中に共通しています。

より深く学びたい方は、ぜひ以下の文献を手に取ってみてください。

あなたの音楽人生をさらに豊かにしてくれるはずです。

  • 「ギターが下手」、原因の90%はリズム感 【新装版】(宮脇 俊郎 著)

    ギター演奏のクオリティを左右する最大の要因は、テクニックや知識ではなく「リズム感」である。メトロノームを使った練習はもちろん、拍の感じ方、グルーヴの出し方など、多角的なアプローチでリズム感を養うことができます。

  • ギター演奏の常識が覆る! 99%の人が弾けていない「本当のグルーヴ・カッティング」(竹内 一弘 著)

    聴き手の心を揺さぶる「ノリ」や「間」を生み出すカッティングの極意に触れています。ナイル・ロジャースをはじめ、ギタリスト別スタイルを紹介しており、カッティングに役立つ豆知識も。

  • 意味がなければスイングはない(村上 春樹 著)

    世界的作家であり、熱心な音楽愛好家でもある村上氏が、ジャズの名演を通して「スイング」や「グルーヴ」の本質について語るエッセイ集。感覚的な「ノリ」とは何かを、豊かな言葉で感じ取ることができます。

  • 雑誌やWebサイトにおける著名ギタリストのインタビュー記事

    ナイル・ロジャース、パット・メセニー、ジョン・フルシアンテといった一流のギタリストたちは、リズムやタイム感の重要性について語っています。「(好きなギタリスト名) インタビュー」などで検索してみると面白いでしょう。


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