Synapseのレビュー 見た目に騙されるな!小さな巨人から放たれるヘヴィ&クリーンサウンド
あれは、御茶ノ水の楽器屋を巡っていた頃。
とある店の、狭い階段の踊り場に、そのギターは展示されていました。
まるでウクレレのような小ぶりなボディに目を疑いました。
それが、Steinberger「Synapse ST-2FPA」との出会いでした。
店員さんの許可を得て試奏した瞬間、文字通り腰を抜かしたのです。
アンプから飛び出してきたのは、その小さな見た目からは信じられない、あまりにもパワフルで解像度の高いサウンドでした。
この記事は、そんな衝撃的な出会いから今日まで活躍し続けるSynapseの魅力と、少しばかりの「クセ」を、愛情を込めて語り尽くすレビューです。
このギターはこんな方におすすめです。
- 取り回しの良いギターを探している
- でも、サウンドには妥協したくない
- ライブもレコーディングも1本でこなしたい
- 人とはちょっと違う、唯一無二の個性を求めている
この記事では、Synapseの魅力と少しクセのある部分を、ユーザー目線でレビューします。
- 「ヘッドレスギターってどうなの?」
- 「EMGとピエゾの両立って便利?」
といった疑問にもお答えできる内容になっていますので、ぜひ最後までご覧ください。
GOOD- 圧倒的なコンパクトさで、スタジオやステージでの取り回しが最高
- ノイズレスでパワフルなEMGピックアップ
- クリーントーンの幅が広がるピエゾピックアップ
- 専用弦が不要で、チューニングも非常に安定
- 独創的な演奏を可能にするローラーカポ
- コンパクトなのにネックは意外と長く感じる
- ライブ前のチェック必須!電池必須のアクティブピックアップ
目次
圧倒的な取り回しの良さ。狭いステージも、自宅練習もストレスフリー
まず特筆すべきは、圧倒的なコンパクトさです。
ボディは最小限のサイズに切り詰められており、最初に持った時はウクレレかと思うほどでした。
このサイズが、特に狭いライブハウスで真価を発揮します。
他のメンバーにぶつかる心配もなく、パフォーマンスに集中できるのは大きなアドバンテージです。
自宅で気軽に弾くときも、ヘッドが壁に当たるようなストレスとは無縁。
まさに「いつでも、どこでも」弾けるギターです。
環境を選ばない安定のEMGサウンド
この小さなボディで、どうやってあのヘヴィな音を出すのか?
その答えが、心臓部に搭載されたEMG 85 & 81です。
正直に言うと、このギターはボディの鳴りを楽しむタイプではありません。
サウンドの核は完全にピックアップです。
しかし、それこそが最大のメリット。
どんなアンプに繋いでも、環境に左右されずEMGサウンドを安定して出力してくれます。
ディストーションをかければ、ザクザクと刻む重低音から、伸びやかでリッチなリードトーンまで自由自在。
逆にクリーンは驚くほど瑞々しく、透明感があるのにどこか粘りのある、独特なサウンドです。
「EMGはどれも同じ音」と敬遠する人もいますが、この安定感とパワーは一度体験すると病みつきになりますよ。
アコギ不要?ピエゾが可能にする無限のサウンドメイク
EMGピックアップだけでなく、ピエゾピックアップも搭載しています。
ピエゾに全振りすると、アコースティックギターっぽいシャリシャリした音に。
わざわざアコギを取り出す必要がなく、これ1本でレコーディングが完結します。
ピエゾのミックス度も調整できるので、音作りの幅が広がります。
ある時、レコーディングで急遽アコギのパートが必要になり、わざわざマイクを立てて録音する時間も場所もアコギもなかったんです。
そんな時、Synapseのピエゾに切り替えてラインで録音で凌ぎました。
シャリっとしたクリスピーなサウンドは、バンドサウンドの中でも埋もれず、良いアクセントになります。
特に、EMGのクリーンサウンドにピエゾを2割ほど混ぜると、他にない立体的なクリーントーンが作れるのでおすすめです。
私のお気に入りセッティング!Synapse音作りレシピ
このギターの真骨頂は、EMGとピエゾのブレンドにあります。私がよく使うセッティングをいくつか紹介します。
レシピ①:煌びやかなアルペジオ用クリーンピックアップ:フロント(EMG85)
ブレンド比率:EMG 8:2 ピエゾ
解説:EMGの太く甘いトーンに、ピエゾのシャリっとした高音域が加わることで、コーラスをかけたような美しいサウンドになります。
レシピ②:カッティングが映えるファンキーサウンドピックアップ:センター(ミックス)
ブレンド比率:EMG 5:5 ピエゾ
解説:コンプレッサーを強めにかけると、キレッキレのカッティングができます。見た目からは想像もつかないファンキーな音です。
レシピ③:モダンなジェント系リフピックアップ:リア(EMG81)
ブレンド比率:EMG 10:0 ピエゾ
解説:これは王道ですね。深く歪ませても音が潰れず、低音弦を刻むリフに最適です。ノイズが少ないので、レコーディングでも活躍します。
驚異的に狂わないチューニングと、汎用弦の安心感
このギターはヘッドレスですが、専用のダブルボールエンド弦は不要です。
一般的なギター弦が使えるので、ランニングコストも抑えられます。
弦の固定方法が少し特殊です。
- ブリッジ側にあるブロックに、弦のボールエンドを引っ掛ける。
- ヘッド側のアダプターに弦を通し、六角レンチ(イモネジ)でしっかりと固定。
- あとはブリッジ側にあるチューニングノブを回して音を合わせるだけ。
この「両端でがっちりロックする」構造のおかげで、チューニングの安定性は驚異的です。
ヘッド側のイモネジを締めすぎると、ネジ山をナメてしまうことがあります。こうなるとパーツ交換が必要ですが、国内在庫がなく、海外からの取り寄せで1ヶ月以上待つことも。
ここは慎重に作業しましょう。
ローラーカポ付属で独特な24フレット
カポタストが移動式で、専用のローラーカポが付属しています。
フレット数は24フレットありますが、2フレットにカポを固定し、レギュラーチューニングを行います。
カポを付けると22フレットとして使用するのですが、カポを付けず純粋な24フレットとしてチューニングも可能です。
この仕様のため、指板のドットと側面のドットがずれています。
コンパクトなのに、なぜか「遠い」ネック
ボディはこれだけ小さいのに、構えてみると0フレットが意外と遠くに感じます。
これは24フレット仕様のジャンボフレットであることと、ヘッド側の弦アダプターの分、少し全長が長くなっているためです。
付属のローラーカポを標準の2フレット位置に固定すれば、一般的なギターとほぼ同じ感覚で弾けますが、慣れるまでは少し戸惑うかもしれません。
アクティブピックアップなので電池が必要
EMGはアクティブピックアップなので、006P角型電池が必要です。
電池がなければ音は出力されません。
いざ使用するとき音が鳴らなければ困るので、常に予備を用意したほうが精神衛生上良いです。
また、電池の取り付けがやや難しいです。
配線が細く短いので、断線しないように注意しましょう。
(1度断線しました)
Synapseが奏でるサウンドを聴いてほしい
EMGはその性質から、リアのディストーションサウンドに注目されがちです。
ここでは、あえてフロントのクリーントーンで演奏した動画を紹介します。
Synapseで主旋律を演奏しています。
このキラキラしたサウンドが、あの小さなボディから出ているのです。
終わりに
エレキギター Steinberger「Synapse ST-2FPA」のレビューでした。
コンパクトさ、サウンドの多様性、そして圧倒的な安定感は、他のどんなギターにも代えがたい魅力を持っています。
ライブ、レコーディング、自宅での練習、どんな場面でも最高のパフォーマンスを発揮してくれるでしょう。
もしあなたが楽器屋の片隅でこの小さなギターを見つけたら、ぜひ一度、その音に腰を抜かしてみてください。
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